ローダウン入門(早く走るため?見せるため?)

人はなぜ車高を下げたがるのか

自動車のドレスアップに、「ローダウン」という手法がある。
サスペンションのパーツを交換し、車高を下げること。

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一般的に、車をカスタマイズする世界では、自動車というもの、車体と路面の間隔が少ないほど格好良いとされている風潮があり、ローダウンだけでなく、エアロパーツ装着などという方法と無味合わせて、車高を地面すれすれまで低くするオーナーが増加しつつあるのだ。
この風潮は、日本ローカルではない。
アメリカには、「ローライダー」という自動車の文化がある。
元々は、アメリカ移民系など、比較的貧しく、高級な新車を買えない層が、廃車寸前の高級車を購入し、格好良く乗るというのが発端。

アメリカでは車高を少しでも低くするのが格好良い

今は、50年代から60年代のアメリカ車を1mmでも地面に近いところまで車高を落とすのが格好良いとされている。
ハイドロやエアサスなどの車高調節機能は必須。
一方、ヨーロッパ車では、機能重視の傾向があるのが、たとえば、ベンツを地面すれすれまで車高を下げるようなドレスアップはほとんどみあたららない。
車高を下げる文化はあるのだが、実用的な走行ができる程度にとどめてあるものが多い。
一見、ノーマルに見えるくらいに控えめなドレスアップが好まれるようだが、車高を落とす際には、サスペンション全体を交換することの方が多く、実際、サスペンションで有名な欧州メーカーも存在するのである。

日本では見せる為のローダウンと走るためのローダウンがある

さて、我が日本であるが、両方のスタイルが存在する。
ドレスアップのコンテストが行われることがあるが、そこで賞を取るような車は、だいたい、可能な限り車高を下げているもので、軽自動車とミニバンに、よく見られる…、いや、道路を走っている台数が多いので、そう感じるのだろう。
その一方で、機能を重視したローダウンもあって、サーキットの走行会、ワインディングロードを快適に走ることを目的とした、ドレスアップというよりは、「チューニング」と呼ぶべき方向性を持ったローダウンの手法もある。
つまり、日本では、見せるためのドレスアップとなるローダウンと、走るためのチューニングとしてのドレスアップのふたつが存在し、目的が異なる以上、このふたつをわけて記述するのがわかりやすそうだ。
車高を下げるというカスタマイズ方法があるのなら、その逆、すなわち車高を上げるのはアリかと思われるかもしれないが、「リフトアップ」という手法が存在する。
これは、悪路や段差でも、ボディと干渉しないよう、アプローチアングルとデパーチャアングルを大きくする目的で、サスペンションを高くし、かつタイヤを大きくするもので、オフロードを走行する目的で作られる自動車に対して行われる。

お洒落な車にするためのローダウン

最近、改良はされてきているが、日本車の場合、外車に比べて、フェンダーとタイヤの間隔が大きい傾向がある。
特に前輪の方が大きいのだが、これは、冬期にタイヤチェーンを取り付けるための空間で、装着したときに、フェンダーに干渉しないだけのスペースを持たせているためである。
そのために、車高が余分に高く感じると思う方がいるというが、わずかでも車高を下げると、違った車のように精悍に見えることがある。
この理屈からわかるのは、一般論として、フェンダーアーチとタイヤの隙間が少ないほど格好が良いという図式である。
時には、停止した状態で、フェンダーにタイヤが入り込んでいる車もあるくらいであるから、低いことにこだわりを見せる車のオーナーも存在することは確かである。
これと関連して、ノーマルではフェンダーから奥に入っているタイヤをフェンダーの幅いっぱいまで外に出すというドレスアップもある。
「ツライチ」
「リムイチ」
といわれるのがそれで、タイヤの幅に関しても、フェンダーに近い方がよいとされるのだろう。
ただし、極度なローダウンには弊害がつきものである。
まず、乗り心地が悪化する。

以前より乗り心地もアップしたローダウンサス

これは、ローダウンのサスペンションは、ノーマルに比べてストロークが短くなるために、固めのセッティングをしている場合が多いからである。
「社外サスペンションがノーマルよりも固い」
というのは、10年前までの常識で、最近では、乗り心地にも配慮し、ノーマルよりも柔らかいサスペンションキットもあるくらいだが、ショックアブソーバがほとんどストロークせず、ゴムブッシュだけで衝撃を吸収している車もないわけではない。
日本の道路は、舗装された平坦なものばかりではなく、地方に行けばそれこそ、整備されていない荒れた道路もあるわけで、そのような道を走行するのであれば、エアロパーツ、マフラーなど、ボディーの底のどこかを擦ってしまうに違いない。
また、荒れた道があるのは道路の整備されていない地方に限らず、東京の都心であっても、タワーパーキング、そして、そこに入るための車道と歩道の段差など、極端なローダウンであれば気を遣う場所は意外に多い。
そして、車高を下げすぎる、地面とボディーがあまりに近いと車検でNGとなってしまう。

法律による規制

「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示第163条」
の測定条件には、次の記述がある。

車高調整装置が装着されている自動車にあっては、標準(中立)の位置とする。ただし、車高を任意の位置に保持できることができる車高調整装置にあっては、車高が最低となる一路車高が最高となる位置の中間の位置とする。

保安基準の車高に関する部分を、一部抜粋した。
この状態で、最低地上高が90mmを確保できていることが、車検をクリアするための条件、ついでに、フェンダーからのタイヤのはみ出しに関しても、明確な規定がある。
車高を限界まで下げた車のタイヤに対して、大きなキャンバー角をつけて、外観から「ハ」の字状になっているのは、タイヤをフェンダーに押し込むための苦肉の策なのである。
タイヤと地面が接触する面積が減り、片減りの原因ともなり、タイヤの寿命も短くなるので、「適切」の範囲を超え、個人的には好ましくない。
それでも書いておくならば、ノーマルのパーツだけでは、大きなネガティブキャンバーを付けることができないので、サスペンション周りのパーツを変更しなければならないし、
「何が必要か?」
 については、その車のサスペンション形式(カタログの諸元表に書かれている)によって変わってくるので明記はしない。
 ちなみに、大半の乗用車のフロントサスペンションに使われているストラット式では、ネガティブキャンバーを付けることはほとんど不可能である。

速く走るためのローダウン

車高を下げるのは、見た目だけのメリットではない。
車高を低くすることによって、走る上で様々なメリットがあるので、だからレーシングカーやスポーツカーは、ローダウンしているだけでなく、車自体の全高も低い。
つまり、高速走行では、車高が低い方が何かと有利なので、レーシングカーでも車高を落としているのである、――ただし、レースごとに車両規定があり、そこで、サスペンション周りの交換は不可とされている場合もある。
まず、車高を下げることで、車の重心が下がる。
重心が低いということは、タイヤに対してボディーの動きが少なくなることで、コーナリングの安定性に効果を発揮する。
また、わずかではあるが、空気抵抗も小さくなる。
市販車ベースのレースでは、サスペンションのストロークも、速く走るための重要な要素となるため、見た目的には、フェンダーとタイヤの隙間がわずかに空いている程度の車高となっている。
SuperGTなどのレースを走る車両の最低地上高も、低いもので60mm程度、見せるための車よりは、多少高めとなっているが、床下は、空気の流れを整えるパーツで、ほぼフラットな面になっている。

走行時のボディの挙動が重要

このように、サーキットでの走行会などで、タイムを出すための車にするためには、車高が低くなるよりも、走行時のボディの挙動が少ないことの方が重要になる。
ローダウンしたときに問題となる、サスペンションストロークの低下も、市販車とは比べものにならないほど、固いものに変えられていることにより、舗装された路面では高速で走行しても大丈夫なように作られている。
ちなみに、ラリーのように、悪路を走行するためのレース使用では、ほとんど車高を落とさない。
このように、競技によって異なるが、外観を重視した車ほど車高を落としていないのが、実際のところである。
実は、愛車を、このようなレーシングカーのような仕様にするというドレスアップもありなのだ。
実際にできることとしては、車高調整式サスペンションに交換し、見た目も性能も満足させようとするのが一般的、それらのパーツも数多く市販されているし、サスペンションストロークの低下に対しても、サスペンションを構成する部品を工夫することで、最低限に抑えられている。
このような、ドレスアップというよりも、チューニングに近い車では、走行時の安定性の方が重く見られるために、乗り心地や快適性はある程度犠牲になることは、あらかじめ覚悟していただきたい。
また、サスペンションの位置がノーマルとは異なるので、車高を大きく下げる場合には、ロールセンターアジャスターなどで、サスペンションの動きを適正化させる必要もある。

見た目と快適性と、走行性能を兼ね備えたカスタマイズは、オーナーとショップ両方に、高度なノウハウと経験が必要になるが、決して不可能なわけではない。
そして、走るために少しだけ車高を落とすことは、国産車はもちろん、ヨーロッパ車の大半、一部のアメリカ車でも効果的で、10mm下げるだけでも、だいぶん印象が変わることがあり、その程度のローダウンであれば、ディーラーでも相談に乗ってくれることがある。

実際の車高の下げ方とは…

サスペンションの中で交換可能なパーツは、バネとショックアブソーバ、そして一部のブッシュ類である。
そのなかで、ショックアブソーバはそのままで、スプリングだけを全長の短いものに交換し、車高を低くする、その目的で作られているのがローダウンスプリングである。
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比較的低コストでローダウンをするのであれば、この方法がよい。
本稿執筆時点では、交換のための作業量と部品代、合計で10万円を下回る。
車種にもよるが、セダンで20mm~40mm、ミニバンであれば50mm以上低くなる製品もある。
見た目の印象では、フェンダーとタイヤの隙間が指1本~2本の下がり具合で、正面よりも、タイヤハウスのあたりをノーマルと比べてみて、確かに低くなったと感じ取れるくらいである。

手軽ではあるが、地面すれすれの低い車高を目指すには、スプリング交換のみでは物足りない。
スプリングの長さによって車高が下がりそうなものだが、短すぎることで、ショックアブソーバの間を上下する、いわゆる「遊ぶ」という状態になってしまい、走行に危険を伴うだけでなく、車検にも不適合となる。
バネの遊びは、車をジャッキアップすればすぐわかる。
また、ショックアブソーバがノーマルのまま、スプリングだけで車高を落とすと、当然、地面からのショックを吸収するためのストロークが短くなり、時と場合により乗り心地が悪化するので、特に後席に人を乗せる機会が多い人は、別の方法を考えることを勧めたい。
この応用編としては、ショックアブソーバを純正と同じ形状の社外品に交換する方法がある。
古い車であれば、走りが一変するし、そうでなくても、スプリングの固さに適合したショックアブソーバ、減衰力の調整も可能なものを選択することで、スポーツ走行にも向いた足回りができるのである。
ローダウンスプリングは、様々なメーカーから発売されており、ディーラーでも、トヨタ系ならTRDのが、ホンダ系では無限の製品を購入することができる。
もう少しお金をかけられるのであれば、車高調整式サスペンションに交換すると、もっとよい結果になる、――走りに関しても、見た目に関しても、である。
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価格は、取付工賃を含めて20万円前後、セダン、ミニバンとも30mm~50mm、あるいはそれ以上車高を落とせるものもある。
車高調整式の構造は、ショックアブソーバのケースにねじを切り、そこに付けられたリングを介して、ショックアブソーバの長さを変えてやるものが一般的。
ビルシュタインなど、ねじの代わりに溝を切り、数段階の車高調整が可能となっているものもあり、この構造は欧州メーカーのサスペンションキットに多く見受けられる。

全高調整式サスペンション

また、全高調整式というのもあり、ケースにねじを切ってあるのは同じだが、ショックアブソーバ自体の長さを変えられるようになっていて、サスペンションのストロークを犠牲にしない構造のものもある。
バネとショックアブソーバ一式を交換するので、ローダウンスプリングより、車高の調整範囲が広く、かつ、乗り心地やストロークが犠牲になりにくく、オーナーが自ら必要に応じて車高を調整することも可能である。
ただし、専用工具と、油圧式ジャッキ、そしてウマは必要になる。
また、スポーツドライビングの際にも、バネとショックアブソーバが専用設計となるために、車高が下がるだけでなく、より高速なコーナリングが可能となっており、ショックアブソーバの減衰力をオーナーが調整できる製品も多いので、好みの足回りを設定できる。
一般的に、ノーマルよりも固いバネを使っているので、乗り心地を重視する方は注意が必要だが、
「車高を下がることで乗り心地が悪化する」
という話は10年前の常識であり、サスペンションキットのメーカーも工夫を重ね、現在ノーマルとさほど変わらない乗り心地を提供している製品もある。
ハードな走行を前提として設計されているため、パーツの耐久性は低い。
もっとも、ノーマルでもショックアブソーバは、ある程度交換しなければならない、いわば消耗品扱いなのである。
そのかわり、オーバーホールを行って、使い続けることができる製品もある。
最近の車高調整式は、サスペンションストロークを確保しながら乗り心地にも配慮し、勝つスポーツ走行も犠牲にしないというスグレモノが続々登場しているので、今後の成長に期待したいところである。
ローダウンのための究極のサスペンションは、エアサスである。
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エアサスのメリット

自動車のサスペンションに空気圧を使うことは、それほど新しい技術ではなく、長距離バスには40年くらい昔から使われている。
最近の路線バスでも、乗降口のステップと路面の段差が少なくなるように、車体の片方だけ高さを下げるのに用いられている。
エアサスのメリットは、基本的に乗り心地がよく、高さの調整が比較的やりやすいこと。
価格は取付工賃込みで50万円以上と、高価なものになる。
かつてはエアサスが標準装備されていた車種も、日本の国産車には存在した。
柔らかい乗り心地を維持しつつ、高速走行時には、自動的に車高を下げることができ、もちろん、運転席から手動で車高を調節することも可能であった。
つまり、室内から車高を調整することも可能なわけで、車高の低さを求めるのであれば、
「まさにこれがいちばん」
と書きたくなりそうなアイテムである。

アメリカ車のドレスアップ、いわゆる「ローライダー」の世界では、同じように室内からドライバーが車高を操作する機能として、油圧を用いて調整するもの、いわゆる「ハイドロ」が多いのだが、国産車向けに関しては、エアサスが多勢を占めている。
これがあれば、イベントでは地面すれすれの車高に調整しておいて、スイッチひとつで、普通の路面の段差を超えられる程度の車高に戻すことができる。
筆者は、「これこそオススメアイテム」と、書こうと思ってやめた。

究極のローダウンを目指すため、いわゆる「見せる」ための車であるならばよいのだが、スポーツ走行にはあまり向いていない。
その理由として、サスペンション交換だけでなく、エアタンクとコンプレッサーを増設しなければならないからで、軽量であることが喜ばれるスポーツ車にとって、余分な重量を増やすこととなり、望ましくないところが、第一に挙げられる。
また、エアサスとは、サスペンションの上に風船が乗っているよう構造なので、乗り心地の良さを求めるには適しているが、足を固めてボディの余分な動きを抑えるような用途には不向きなのである。

エアサスは日常メンテナンスが欠かせない

エアサスは通常のサスペンションよりも部品点数が多く、中には壊れやすいものもあるので、通常のメンテナンスは欠かせない。
エアサスのトラブルを起こす話は、割とよく聞くので、車をまめにいじる方でなければ、手放しでオススメできるようなものではなく、エアサスを入れた中古車を買って、故障した部分を修理するのに相当な金額がかかったという話もある。
最近は、エアサスとねじ式車高調整機能の両方を持ったサスペンションキットも販売されている。
で、個人的嗜好も交えた筆者自身の好みはといえば、全高調整式の車高調整サスペンションキットで、フェンダーアーチとタイヤの上面が同じくらいになる程度のローダウン、車高は前後同じで水平になるように、ネガティブキャンバーは、あくまでも走りに有利な程度に付ける…、というものである。

ここで紹介したサスペンションの交換、ショップに依頼しなくても、オーナー自身でもできないわけではない。
必要なものは、油圧式ジャッキ(車載のジャッキでは不可)、ウマ、メガネレンチ、スプリングコンプレッサー、タイヤレンチ、そして助っ人1名…、これが最低限。
これら、名称を挙げたものに対して、知識を持っていないのであれば、購入したお店に交換を依頼するのが無難。

2013-02-15再編集

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